別世界旅行としての文章書き

結城浩

2002年10月8日

「暗号本」である。 バスを待ちながら「はじめに」の書き出しを考えてみる。

マクドナルドに着いた。 手が動くまま「はじめに」を書いてみる。 うーん。まだまだだなあ。

手が動くままイントロの章を書いてみる。 イントロはとても難しい。 いきなり深い解説を書きそうになって少しブレーキをかける。 うーん。

目次を見ながら、本の全体像を表現する図をスケッチしてみる。 なかなかうまく描けないものだなあ、と思う。 図を描いていると、自分の理解が不十分な部分が見えてくる。 うまく収まりが悪い概念が見えてくる。 参考書を調べてみて、 収まりが悪いのは私の理解がまずかったからだ、と思う。 理解がまずかった部分について再考してみる。 修正する。

じっくりと、いろんなことを考えるのはとても楽しい。 リアルワールドとも違う。ネットとも違う。 まったく別の世界に旅行に出かけるような気持ちになる。 カメラも持った。パスポートも持った。ガイドブックも忘れずに。 エアチケットはポケットの中。さあ出かけよう。 見たこともない(けれどどこかで見たような)景色が広がる。

「コーヒーのお代わりいかがですか」と、 マクドナルドのお姉さんが声をかけてきて、 私はものすごくびっくりして急激にリアルワールドへ戻ってくる。