時計クイズ

結城浩

私と長男(8歳)と次男(3歳)の三人が、電車に乗っている。

    *   *   *

長男「ねえ、何か問題出して!」
 私「じゃあ、時計クイズをしよう。
   いま、午後3時だとする。長針と短針の角度は?」
長男「うーんと…。90度、だね」
 私「ピンポン、正解。それは小さいほうの角度だけど、大きいほうの角度は?」
長男「外角、ってことかな。ええとね。360度から引けばいいんだ。280度!」
 私「がっくし。ブブー」
長男「あ、違った。270度」
 私「はい、正解です。360度から90度を引いてもいいけれど、90度が3つ、と考えてもいいんだよ」
長男「あ、そうか。なるほどね」

    *   *   *

 私「じゃあ、次の問題。いま午前10時だとする。長針と短針の角度は?」
次男「私は、バズ・ライトイヤー」
長男「ええ? …わかった、5分が何度かを計算すればいいんだ。
   360度を12で割って…。ええと、うーんと。
   90度を3で割ってもいいや。30度だ。だから、
   わかった。60…度!」
 私「はい、正解です」
次男「無限のかなたへ、さあいくぞ」

    *   *   *

 私「では、次の問題。一日に短針は何回転する?」
長男「一日って何時から始まるの?」
 私「何時からでもいいよ」
長男「違うの。あのね。夜中の0時にはじまって、夜中の11時までいくでしょう?
   そのときの夜中の0時になった…そのとき!っていうのは今日なの?明日なの?」
 私「それは一日の始まりの0時を今日に含めたかどうかによるね」
次男「来たな、ザーク」
長男「どういうこと?」
 私「もしも一日を0時からにしたなら、一日たった後の0時の直前までが『今日』だよ」
長男「あ、柱状グラフって知ってる?」
 私「ヒストグラムのことかな?」
長男「そのグラフを作るときには、『以上未満』の表を作るんだよ。
   たとえばクラスのメンバーのボール投げの距離をはかるときなんかに」
 私「なるほど。一日もそうだね。
   夜中の0時「以上」、一日がすぎた後の0時「未満」だから。
   その指摘はすばらしい」
長男「へへ」
次男「応答せよ。バズ・ライトイヤー」
 私「ところで、一日に短針は何回転する?」
長男「一回!」
 私「がっっっっくし」
長男「あ、違った二回だ。ぐるぐるって回っているからね」

    *   *   *

 私「『以上・未満』の代わりに『より大きい・以下』を使ってもいいよ」
長男「えーと…あ、わかった。なるほどね」

    *   *   *

 私「じゃあ、一日に長針は何回転する?」
長男「一日は24時間だから…」
 私「ふんふん」
次男「(まどの外を指差して)おとーさん、電車だ電車!見て見て!」
 私「うん、電車だねえ」
長男「24×60を計算すればいいね」
 私「(こける)ちがーう。それじゃ秒針の回転数を求めている」
長男「何で?…あ、あああ、あ。そうだ。24回。へへー」

    *   *   *

 私「じゃあ、一日に秒針は何回転する?」
長男「今度は24×60だ。ええと」
 私「暗算でやるのはちょっとつらいね。大体でもいいよ」
長男「じゃあ、まず20×60をやればいい。これは120になるから。
   あとは4×60だ」
 私「ちょっとまった。20×60って120?」
長男「うん」
 私「2×60も120なんですけど」
長男「あ、違った。1200だ。4×60は…240だから両方足して、1460だね」
 私「1440」
長男「へへ。そうだね」

    *   *   *

 私「ところで。あなたの心臓は一分に何回どきどきするだろう」
長男「知らない」
次男「おとーさん、電車乗り換え、するの?」
 私「もう乗り換えはすんだの。あと二つで降りるよ。
   だいたい72回くらいかな。まあ一分に60回どきどきするとしよう」
長男「ふんふん」
 私「さっきの計算でいえば、
   あなたの心臓は一日に1440回どきどきすることになる。
   …意外と少ないな」
長男「ええ! 1440回! 多いじゃん!」
 私「そう? まあ多いか。
   あなたが眠っているときも心臓は動いている?」
長男「もちろん。とまってたら死んでるって」
 私「そだね。
   眠っている間もちゃんと心臓が動いているようにあなたは作られているんだよ」
次男「おとーさん、降りなきゃ!しまっちゃう」
 私「降りるのはこの次の駅だよ」

後日、読者からメール。

> 私「さっきの計算でいえば、
>    あなたの心臓は一日に1440回どきどきすることになる。
>    …意外と少ないな」

一分あたり60回 * 60分 * 24時間 = 86400
86400 ではないでしょうか?

その通りでございます…。親子して計算ミス。

(2003年3月24日の日記から)

豊かな人生のための四つの法則