エディタで考える。ツールを作る。

結城浩

ツールが変わると、気分も変わる。 特に、文章を書くツールは重要である。ほんのちょっとしたことが気分に大きく影響する。 私の場合にはコンピュータのキーアサイン、エディタの行間、フォントの大きさなどのすべてが気になる。 気になるところをちょっとずつ修正して、できるだけ気分がよく仕事ができるようにチューニングしてある。

プログラミング言語処理系も重要。 PerlとJavaがいつもフル稼働している。 リアル生活は散らかしっぱなしだけれど、ディスク中は整理整頓が行き届いていて、 どこに何が置かれているかをきちんと把握している。 何かを「やりたい」と思ったときに、ツールがすべてぴかぴかに磨いてあって、 なめらかにオイルも塗られている。思ったとおりの動作を指示通りにこなしてくれる。 自分のマシンがそういう状態になっているのは、とてもうれしい。

私の場合、エディタは考えるための道具でもある。 私は文章を書きながら考えごとをしている。いまもそうだ。 文章がどこに向かうのか、私にはわからない。 いつもカーソルという舳先に立って、目もくらむような大海原を前に、 心にうつりゆく言葉をどんどん書き進める。 ちょっと書いては読み、読んでは書き進む。 そうやって、私は考えている。

大昔、ワードマスターというエディタがあった(知ってますか?)。 私はワードマスターにはじめて触れたとき「ああ、これで考える速度で文章が書ける」と感動したのを覚えている。 エディタを起動し、手が動くままに文章をつむいでいくとき、私はとてもリラックスする。

今回、私がこの日記をYuki::Diaryというモジュールを作って再構成しているのはなぜだろう。 多分に、はてなダイアリーライターの作成が影響を与えているように思う。

もともと、はてなダイアリーは嫌いではないのだが、Webでいちいちログインしなくちゃいけないのがどうにも面倒であった。 ログインが必要な理由はよく分かる。でも面倒なのは確か。はてなダイアリーライター(はてダラ)を作ったのは、 その面倒なログイン(クッキーのやりとりが必要)を省略したかったから。 作るのは楽しかった。また、使っているうちに、その便利さと手軽さを気に入ってしまった。 はてダラのために、自分のサイトを更新するよりも、はてなダイアリーを更新するほうが楽になってしまった。

以前Yuki::Kakeraを作ったときの部品を組み合わせれば、すぐにYuki::Diaryは作れると思った。 また、テキストファイルをパーズしてPerlのオブジェクトとして管理させる方法は、 textfile.orgでやった経験を生かせると思った (っていうほど大げさな話ではない。単にPerlのオブジェクトに慣れているというだけ)。

こんな風にして、Yuki::Diaryを作り始めた。 はてダラを作ることも、Yuki::Kakeraを作ることも、textfile.orgを運営することも、 もちろんYukiWikiを作ることも、それぞれはそんなに大した話ではない。 でも、自分の「あ、こういうの作ってみたいな」と感じる気持ちを、 その都度その都度かたちにしていくことは大事だな、と思う。 うまくいかなくてもいい、汚いプログラムになってもいい。 自分が使うツールを自分で作っていくことは、とても楽しい。 しかも、プログラミングの勉強にもなる。

そうしてできたツールを公開する。そうすると他の人にも喜んでもらえるかもしれない (MakeWebも、YukiWikiも、Yuki::Kakeraも、はてダラも、いろんなユーザが使って下さっている)。 それって、お金では買えない楽しみだと思いますね。

(2004年9月10日の日記から)

豊かな人生のための四つの法則