「一億」のゼロの個数

結城浩

2003年3月12日

長男「何か問題だして!」

私「うーん、じゃあ、一億にはゼロがいくつある?」

長男「え? 8個!」

私「正解。それじゃ、一万を何倍したら一億になる?」

長男「ええと…百倍?」

私「違う」

長男「じゃあ千倍?」

私「一度まちがった後は、もっとよく考えてから答えるんだよ」

長男「よく考えたよ。千倍」

私「いや、違う。一万はゼロが4つ。千はゼロが3つ。一万に千をかけるとゼロは7つ。一億はゼロが8つだから不正解」

長男「そうか。じゃあ一万を一万倍したら一億」

私「はい、正解。あのね、お父さんは、問題を二個出すとき、最初の問題と二番目の問題が関連するように考えて出してるんだよ」

長男「ふうん」

私「次ね。一億を百万にするには何で割ればよい?」

長男「ええと、百で割ればいい」

私「はい、正解です」

長男「一億を百で割ると二個消費するからね」

私「そうだね。百で割るとゼロを二個消費するからね。こんなふうに、掛け算はゼロの個数の足し算になるし、割り算はゼロの個数の引き算になるんだ」

長男「ふうん」

私「これであなたは、名前を知らない数の掛け算・割り算もできるようになったんだよ」

長男「?」

私「たとえば、1の後にゼロが20個並んだ数と、1の後にゼロが15個並んだ数を掛けたら、何になる?」

長男「ええと…1の後にゼロが35個並んだ数になる…?」

私「はい、正解です。あなたはその数の名前を知らない。でもちゃんと掛け算はできる」

(補足解説)

「数そのもの」から、「その数のゼロの個数」に着目点を移す。 そうすると、とてつもなく大きな数でも取り扱うことができる。 そしてこれが「対数(たいすう)」という考え方なんだ。

対数で考えると、 掛け算は足し算に、割り算は引き算になる。