掲示板

インターネット・コミュニティの歩き方

結城浩

今回は、みんなが集まる「掲示板」のお話です。

コアラくんがやってきました。

コアラ: 結城さん、教えてちょうだいな。

結城: なんだい、コアラくん。またユーカリの葉っぱをくわえて。何か困ったことがあるの?

コアラ: あのね、インターネットに「掲示板」ってあるでしょ。

結城: うん、ありますね。みんなでアクセスして読んだり書いたりするWebページだよね。掲示板がどうしたの?

コアラ: その「掲示板」に質問を投稿したいんだけれど、何だかこわくてできないんですう(ユーカリの葉っぱをかじかじ)。

結城: ふうん。投稿するの、何がこわいのかな。かじかじしていないで話してくれる?

コアラ: あのね、その掲示板ではときどきケンカが起きるんですう。初心者が書き込むとね、常連の人が「質問の仕方がなってない」と怒ったりするんですう。

結城: なるほど。うん、それはネットの掲示板ではよくあることですね。でも、書き込む前にその掲示板の雰囲気を見極めようとするのはとてもよいことだよ。コアラくん、えらいえらい。あのね、まず大事なのは、その掲示板の目的と雰囲気をよくつかむことなんだ。

コアラ: 目的、って何ですか?

結城: たとえば、そこが、初心者のサポートをしてくれる掲示板なのか、わいわい雑談をする掲示板なのか、それとも高度で専門的な議論をする掲示板なのか、ということですね。

コアラ: ふうん。掲示板、っていってもいろいろあるんですねえ。あ、でも、そういうのはどこを見ればわかるんでしょうか?

結城: 掲示板のどこかに「はじめての方はお読みください」のような文章が書いてあったりしますね。書いてないときも多いけれど。

コアラ: 書いてないときはどうするんでしょう?

結城: 書いてないときは、これまでの書き込み(過去ログ)を読んで、自分で推測するしかないですね。

コアラ: ええ! そういうの苦手なんですよねえ…かじかじかじ。

結城: ほらまたユーカリの葉をかじる…あのね、自分が知らない人たちが集まっている場所にいったら、まず、この集まりはどういう集まりか、って考えますよね。

コアラ: ん? そ、そうですね。

結城: インターネットの掲示板でも、それと同じことです。まずは投稿の前に、掲示板の様子をしっかりつかまなくちゃ。

コアラ: けっこう大変なんですねえ。

☆     ☆     ☆

コアラ: あのね、結城さん。いまさらなんだけれど、掲示板ってどういう仕組みになっているんですか?

結城: 絵に描いてみました。まん中に「ネットの掲示板」ってありますね。これはインターネットを通じて多くの人がアクセスできるところに置いてあるプログラムです。みんなはWebブラウザと呼ばれるソフトウエアでこのプログラムにアクセスする。

掲示板

コアラWebブラウザ

結城: Webページを見るソフト。Windowsのユーザーだったら、Internet Explorer(IE)でアクセスする人が多いと思うけれど、IE以外にもOpera(オペラ)とかMozilla(モジラ)など、いろんな種類のWebブラウザがありますよ。掲示板の上には書き込む場所(フォーム)があるから、そこに書き込んで投稿する。投稿した内容は、掲示板が置いてあるサーバーに蓄積されて、他の人も読むことができる。

☆     ☆     ☆

カンガルーくんが騒々しく入ってくる。

カンガルー: ちわーっす。あ、コアラがいる。どしたのどしたの、掲示板? そんなのパパーっと書いちゃえばいいんだよ。パパーっと!

結城: カンガルーくん、いつもむやみに元気がいいなあ。普段からよく見ていて慣れている掲示板ならいいかもしれないけれど、書き込みの前にはよく読み返したほうがいいよ。

カンガルー: そっかなー。だってオレが書き込む掲示板って、全部でうーん、5人くらいしか見てないんだもん。みんなよく遊ぶ仲間だしさ。問題ないない!

コアラ: そうか、見ている人数が少ない掲示板なら書きやすいね。

結城: あのね、二人ともよく聞いてね。掲示板を何人が読んでいるかを判断するのはとっても難しいんですよ。

コアラ: どういうこと?

カンガルー: へ?

結城: だって、掲示板に書いている人数よりも、ずっと多くの人が「読むだけのメンバー(Read Only Member、ROM ロム)」だったりするからね。ほら、さっきの絵にも、ROMのことは描いておきましたよ。

コアラ: ふうん。ROMってそんなに多いのかな。あっ、ボク自身がそうだった!

結城: そう。掲示板に書いた内容は何百人、何千人の人から読まれることもあるんですよ。

カンガルー: ひゃあ! それってちょっと恥ずかしいかも。削除したくなってきちゃった。

結城: それに、掲示板に書いた内容が、まったく別のサイトの検索エンジンで長期間保存されていたりすることもあるんだよ。そうすると、元の掲示板で削除された後でも書いた内容は生き残っているかもしれない。

カンガルー: げげっ!

結城: だから、プライバシーにも注意しなくちゃいけない。不用意に自分のメール・アドレスは書くのはよくない

コアラ: メール・アドレスを書くのがいけないの? どうしてですか?

結城: 最近広告メールや迷惑メールが多いからだよ。掲示板に書かれたメール・アドレスを回収していく人(ソフト)がいるんだね。メール・アドレスを書かなければいけない掲示板もあるから、そういうときにはフリーメールが便利かもしれない。無料でもらえるメール・アドレスだね。これはまたいつかお話しましょう。

☆     ☆     ☆

結城: 掲示板では、普通は管理者、管理人、シスオペなどと呼ばれる人がいることが多いね。

コアラ: 管理者?

結城: そう。書き込まれた投稿を調べていて、わかりにくい書き込みにコメントをつけたり、迷惑書き込みを削除したりする人。

コアラ: え、他の人の書き込みって削除できるの?

結城: そう。管理者だけがそういう特別な権限を持っている。そういう人が、掲示板に集まる人にうまいヒントやアドバイス、適切なフォローをしていると、雰囲気のよい掲示板になるね。

☆     ☆     ☆

コアラ: 迷惑書き込みといえば、「荒らし」っていう言葉を目にするけれど、あれも関係してますか?

結城荒らしっていうのは、掲示板の議論とは無関係な大量の書き込みをしたり、他の参加者の書き込みの妨害をしたりする人のこと。掲示板の雰囲気を荒らすから荒らしって呼ぶんだね。

カンガルー: 荒らしってやな奴だなあ。そういうのはボーンとやっつけて、掲示板から追い出しちゃえばいいんだよ。ボーンって。

結城: でもね荒らしの書き込みに反応しすぎると、荒らしは喜ぶし、掲示板の雰囲気も悪くなる。だからあまり過剰に反応しないほうがいい。できれば、無視して管理人にまかせたほうがいい。でないと、あなた自身が荒らしだと思われることもあるよ。掲示板の雰囲気を壊す手伝いになっちゃうからだね。

コアラ: へえ、なるほど。でも、管理者っていかにも大変そうですね。

結城: うん、掲示板の管理者さんはとっても大変だよ。Webページを公開した人は、割合に軽い気持ちで掲示板をはじめたりする。人が集まって楽しそうだし、有益な議論ができそうだからという理由でね。でもトラブルが起きて閉鎖しちゃうことも多い。

コアラ: どうしてですか?

結城: 掲示板では短い言葉で、互いにコミュニケーションしなくちゃいけない。顔も見えず、声も聞こえない相手とね。ある人が冗談で言った軽口を、他の人はまじめな主張だと誤解するかもしれない。そして参加者同士がケンカをはじめる。でも管理者もそういうコミュニケーションに慣れていないから、それを仲裁できない。どんどん雰囲気は悪くなる… そんな流れかな。

カンガルー: でも、管理者は何でも削除できるんだから、雰囲気が悪くなったらバンバン削除しちゃえばいい! いやな投稿はドンドン削除さ!

結城: やれやれ、乱暴だなあ。業者の宣伝目的の書き込みなどだったら、さっと削除するのもよいけれど、いつもの参加者の投稿を削除するのは最後の手段だよ。誰だって、自分の書き込みを削除されたらいい気持ちはしない。だから、削除しなくちゃならないほどの状況に陥る前に、普段から掲示板の雰囲気をよくするようにフォローを心がける必要があるんだね。

コアラ: ふうん。掲示板の管理者さんってはたで見ているより、ずっと大変なんですね。

☆     ☆     ☆

コアラ: ねえ、結城さん。掲示板って実際の社会みたいなんですね。掲示板って、書き込んだら誰かが必ず答えてくれる便利な場所だって思ってたんです。

結城: そういう掲示板もあるけれど、普通は互いに支えあう情報交換の場であることが多い。雰囲気をうまくつかんで、うまく利用したいものだね。

コアラ: 今度、自分がよくいく掲示板で、他の人の書き込みを参考にして質問してみようかな。結城さん、どうもありがとう。

カンガルー: なんだなんだ、話まとめちゃうのか。オレもちょっとは読み返してから書き込みするようにしよっかな!

結城: うん、書き込む前に読み返すのはとてもよいことだよ。きみたちの書き込みはとても多くの人が読むんだからね。じゃ、またね。

コアラくんのまとめノート

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(このページは、 日経ソフトウェア誌への連載記事を元に再構成したものです。 Webでの公開を快諾してくださった編集部に感謝します)

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