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単語帳
by YomoYomo****
翻訳をしていて気になった単語や言いまわしに関するメモ。どこまで一般に通用する内容かは保証の限りではない。
上に新しいのが来た方が見やすいので、そうする(2001/11/02)。
graceful degradation
技術関連の文章を訳していて、「graceful」という単語を目にすると、場違いな感じがして、妙にたじろいでしまうものだ。もちろん「優美な」という意味ではない。
大部分のインターネット・ユーザが利用しているブラウザは、画像表示をサポートしている。しかし、そうでないブラウザもあるし、画像表示をオフにして閲覧しているユーザもいる。あと(これが大事なのだが)音声読みこみブラウザなど、テキスト表示すらしないブラウザもある。
で、そうした表示機能が劣る(もしくは別形態を採る)ブラウザでも、それにできるだけ合わせた形でアクセシビリティを保つことを、graceful degradation という。img タグに alt 属性を付け、テキストブラウザで表示しても、そこに何の画像が来るか説明するのがその代表例。
最後になったが、「適切な低均作用」とか「低均化」と訳すようだ。
- 結城 先日、まさにこのgracefulに関連した章を書いていました。
graceful terminationなのですが、
「優美な」という訳、好きなんですけれどねえ…。
真面目な話、ここでいうgracefulというのは「お作法を守っている」ということでしょう。
graceful degradationというのは、
機能が貧弱なブラウザに対しても無作法な振る舞いをしないWebページ、
ということでしょうか。
- Hippo2000以前どこかで見かけたときは「わかるけど日本語に落としにくいなぁ」と
悩んで、「お上品な」としたか、文の流れを変えてしまったか...。叶姉妹より石田ゆりこ様って感じなんだと思うんですが(例えが無茶?(^^;;;)
- YomoYomo 上の記述に付け加えておくと、もちろん graceful の「優美な」というニュアンスがまったくないわけではないと思います。文章で見かけたときも、Hippo2000さんと同じく「わかるけど日本語に落としにくいなぁ」状態でした(こういうのが多いんだ!!)。この単語帳では、そういった単語、言いまわしを取り上げたいわけなんですな。あと、これは僕の方針として、その分野で何かしら定訳があるなら、基本的にそれに従い、原語をカッコ書きで加えるようにするつもりです。「適切な低均化(graceful degradation)」というように。
:スタイル・シートとHTML(加藤泰孝さん):
http://www.asahi-net.or.jp/~bd9y-ktu/W3Ccss1/yomicss.html
「適切な降格(低均化)」と訳されている。
:どんなブラウザでも見えるように(Asadaさん):
http://www.tsc.co.jp/~asada/html/campaign/abdesign.html#degradability
「適切な低均作用」と訳されている。
production
普通この単語は「生産」「製造」「製作」といった名詞として利用する。「製品」という意味もある(余談だが、我々はよく「芸能プロダクション」と言うが、手元の辞書をぱっと見ただけでは「会社」的な意味はない。これは和製英語なのだろうか)。
しかし、例えば
how the module can work on a production Web server
とか
a real production domain
のような表現を見ていると、どうもしっくりこない。ひょっとして形容詞としてのproductionなのだろうか。辞書には「生産の」「製造に関する」と一応形容詞の意味もあるのだが、これは当てはまらない。「稼動している」とでもいったところだろうか。
- reki 開発や構築における「本稼動」の意味で形容詞的に使っているのを見かけます。"production phase"など。対義語は "pilot"「試験」でしょうか。
- なるほど、ここでのpilotは「パイロット版」のpilotだな(何じゃそりゃ)。そしてその対義語としてのproductionということですか --yomoyomo
- ShiroKawai 私もよく "production" を「実稼動」の意味で使います。Longmanには4つ意味が出ていますが、"the process of making products"からの派生かな。情報システムにおいては "service" == "product" と考えれば、「実際に顧客に提供できるサービスを作り出すプロセス」ということになります。ちなみに "production" には "something produced by skill or imagination, esp. a work of art or a play, film, or broadcast" という意味もあり、これから番組製作会社のことを"production company" と言います。「芸能プロダクション」はきっと後ろに「会社」が省略されているのでしょう。
- Kawaiさんの解説を読んで分かったのが、この「process」を少し忘れていたようです。productとなるとそのまま「製品」となりますし、productionにもブツ的な意味がある。そこにつながる…と考えないといけませんね。確かにこれを情報(ネットワーク)サービスに置きかえれば大分イメージが湧いてきます。うーむ、言語は奥が深い。そうか、やはり「会社」が省略されているのか。 --yomoyomo
roll-your-own
これは手巻きの紙巻タバコという意味もあるらしいが、例えば、
the roll-your-own approach of setting up your own server
という言いまわしで出てくる場合はどう訳したものか。はじめ「よく慣れた」ということかと思った。その後「俺流」ということかと思った。その後「てめえで仕切る」ということかと思いなおした。どうでしょうか、皆さん(って誰だよ)。
- 手巻き寿司のことを roll your own sushi というみたいですね。roll-your-own には自分の手を動かして何かをするイメージがあるのでしょう。上記の言いまわしは「自前でやる」という意味だと思いますが、サーバのリモートセットアップとの対比を念頭に置いた表現なのかもしれません。そうだとすると「手動で」が適当かも。-- asano
- なるほど、タバコにしても寿司にしても、それを味わう人自身が手元でくるくるっと回すという感じですか。そのニュアンスを出したいのでしょうね。(ホスティングなどでなく)ユーザ自身がサーバの tweak をやって自分なりのものにするという。 -- yomoyomo
sanity check
文章にもそのまま表記されることが多いが、敢えて訳すなら「健全性検査」かな。
要は、IPアドレスが入るのに、ドットで区切られた値が255を越えることはないっしょ、といったチェックなどを指す。
この言葉を始めてみたのは、KAMEスタックのコードだったと思う。sanityという単語が分からず、Babylonで訳したら「正気の」とか出てきて、何でプログラムで正気であるか確かめなならんのか、と思ったのは懐かしい思い出だ。
余談であるが、プログラムの sanity もそうだが、それを作る側の sanity も危険にさらされている。
:積木くずし:
http://slashdot.jp/journal.pl?op=display&uid=2824&id=22073
を読むとそんなことをふと思ったりします。あとついでに言えば、訳者の sanity も… -- YomoYomo
content
中身、内容、という意味でももちろん使われるが、今訳している文章で最も頻出するのが、ウェブページのcontent、つまり、「コンテンツ」という意味。
しかし、面白いことに、「コンテンツ」と訳するところで、contentsと複数形になっているのを見たことがない。もちろんそれはそれでよいのだが、そもそも「コンテンツ」と言い出したのは誰なんだ?
- ShiroKawai 誰が「コンテンツ」と言い出したのかは知りませんが…抽象的な内容を指すときには"content"、一つ一つ具体的に数え上げられるようなものを指すときには"contents"とすると思います。例:"the content of the book", "the contents of the purse". 書かれた文章は通常前者ですが、「目次」を意味する時は"table of contents" となるので(章ごとに数え上げるイメージ?)そのへんから来ているのかも。
- まあ、考えてみれば同じように複数形が日本語化したものって他にもありますね。「スポーツ(sport)」「スーツ(suit)」など。確かに目次は"table of contents"と言いますね。 --yomoyomo
backlink
これはいわゆる「逆リンク」のこと。
例えば、この YukiWiki なら、画面の一番上のロゴの右側に、PageTitle? がリンクになってますよね。これをクリックすると、その WikiName を含むページの一覧が表示される。この場合 WikiName はすなわち PageTitle? なのだから、そのページへの逆リンク表示結果でもあるわけ。
Only a click away.
「1クリックで行けまっせ」ということのようだ。
context
「文脈」という訳語が最も包括的である。前後関係というか、流れというか。
言語学の世界では文脈依存(context-dependent, context-sensitive)などの用語でおなじみだし、そのまま「コンテキスト」と訳す専門分野もある。
が、これが一般の文章にでてくると訳に苦労する。そのまま「文脈」とはできないことが多いからだ(それじゃ硬いもの)。先ほども書いたとおり、「前後関係というか、流れというかさ…大体言いたいこと分かるっしょ?」と言いたくなるがそれは翻訳ではない。
以上が文脈依存言語である日本語らしい文章(ウソ)。「状況」とか「環境」とか適宜あてはめていくしかない、と思っている。
しかし、WikiWikiWeb とも馴染みの深いパターン関係の世界では、そのまま「コンテキスト」と訳すことに注意。以下結城さんと愉快な仲間たちによるデザインパターンFAQから引用。
コンテキストとは、 繰り返し発生する一群の状況のことを指します。その状況にパターンを適用することになります。
- 結城「コンテキストの訳語は、コンテキストに依存する」
- YomoYomo あははは! 一本取られました。でもその通りですね。
あと、訳語として「前後関係」というのもある。これは「文脈」と似たような感じであるが、現実の「前後」を指す場合もある。例えば、検索エンジン(サイト)の設定で、検索に合致した前後の文章を表示する/しないを設定可能なことがあるが、この「前後の文章」という意味で context を使ったりもする。「full search with context」などというように。
industrial-strength
ここでの industrial は「工業」とか「産業」ではない。「実務に使える」「業務に強い」といったことであり、よく使われる言い回しらしい(ShiroKawai さんからの情報。翻訳格闘例1参照)。
- ShiroKawai 補足すると、セールストークめいた感じがします。原文でもそういうニュアンス
を匂わせるためにクオートしてあるんではないかと。"production strength" とか
"production ready" なんかも似たような感じですね。
- 結城 そういう雰囲気を強めるときには「いわゆる」「よく聞く」というのを前置するか、
「などといった」を後置するときがありますね。
今翻訳の合間に「プログラミングPerl改訂版」をぱらぱらと読んでいたのだが、「はじめに」のところで以下のような文がある。
この逆の極端な例としては、ある有名な「工業用強度を持つ」言語では、ほとんど何をするにしても同じくらい困難である。
これの「工業用強度を持つ」というのは、多分 industrial-strength なんだろうな(原著がないので断定はできないが)。「業務に強い」の方がやはりずっといいな(笑)。 -- yomoyomo(2001/01/01)
less-is-more, more-is-less
これについて書くのを忘れていた。前者は「過ぎたるは及ばざるが如し」ということだと思う。で、後者となるとこの反対だから…「大は小を兼ねる」というあたりだろうか。
- 久方ぶりに見直していて驚愕。これ逆じゃん! More is less. の方だが、これは「大は小を兼ねる」という肯定的な意味ではなく、「多くなるほど(実質は)少なくなる」といった意味のはずだ。 -- yomoyomo (2002/02/08)
- 結城 less is more. という成句のすごいところは、自己言及的であること。
つまりこの言葉自身が、less is more の実例になっている。
- 「less-is-bore」も対義語でしょうか。あ、通りすがりの八木です。
- YomoYomo 八木さん、ごぶさたしてます。どうやら元は建築用語のようですね。
「建築相談室」( http://www.nittem.co.jp/counsel/post_modern.htm )からの引用。
建築家ミース・ファン・デル・ローエの"less is more"(少ないほど豊か)という言葉に象徴される今世紀の建築様式であるモダニズムが目指した機械的、均質的、合理的といったスタイルに対して、アメリカの建築家ロバート・ベンチューリは、1963年の代表作「母の家」や1966年に発表したその著作『建築の多様性と対立性』において、建築の潮流に大きな影響を与えました。その流れは、ミースに対して"less is bore"(少ないほど退屈)という言葉をキーワードとして、ポスト・モダンという運動になっていきました。
- こちらこそご無沙汰です。建築とソフトウェアで思い浮かんだんですが、ここ10年くらいは「開かれた」建築ってのが流行みたいですね。ガラス張りで外から中が見える建物とか。もっとも、それはあくまでイメージであって、いくら開かれているっていっても別に設計図を誰でもダウンロードできるとかいうわけじゃないんですが。悪い意味でとってもポストモダン?(オフトピック失礼・八木)
- YomoYomo まあ、八木さんの日記は毎日読んでいるんですがね(笑)。運営ポリシーにもよりますが、ここのようなWikiの場合、「オフトピ」というのはないに等しいと考えてよいでしょう。話題は広げるだけ広げていいし、何かあれば WikiName を作ってそこに書く、という(むしろ僕のような私物化するような使い方の方が…)。僕は建築方面の知識は皆無なのですが、上に出てくる単語を見るうち思い出したのが、山形浩生と五十嵐太郎による対談です。この場合、「まちづくり(都市計画)」というもう少しスコープが広い話なのですが、今読みなおしてみると、「パターンランゲージ」への言及があったりして、ちょっと驚きました。
:バーチャルシティのデザイン 伽藍型まちづくりからバザール型まちづくりへ:
http://ruitomo.com/~hiroo/hiroo/citylife.html
- 誰だったかな、もはや建築は不可能だって宣言して、何も作らない建築家集団っていうのが日本に実在したって話を聞いたんですが。ちょっと出来過ぎなんで担がれてんのかと思っちゃいましたが、ほんとらしいです。大規模都市計画って中国だとバリバリの現役なのかな。あ、ちなみにプロジェクト・グーテンベルグで英語の建築関連書籍を検索すると、なんと一件もヒットしません。(八木)
- 何も作らないで食っていけるなら、これほどありがたいことはない(笑)。それはともかく、プロジェクト杉田玄白にしても、建築などこれまでまったく登録のない分野からの参入があると面白いんですけどね。もちろん建築に限らず、みょーなものが翻訳されると受けると思うんですがねえ。 -- yomoyomo
- 二十世紀の建築家と言えば R.Buckminster Fuller ( http://www.bfi.org/ ) の "(Do) More with less" も挙げておきたいですね。通りすがりの平山雅浩でした。
markup
かってに追加してみます - typer
- 使用文
- http://www.perl.com/pub/a/2003/05/14/kwiki.html
Wikis use a much more natural markup, that〜
辞書を引くと「値上げ」とありますが、ここではHTMLでのmarkupです。
コンピュータ用語としては"markup language"で「マークアップ言語」と訳されますが、
単独で"markup"とあった場合には「マークアップ」だけだとひねりがない。
ほかに良い訳がないですか?