二進数

結城浩

長男「ねえ、お父さん。二進数で数えられるようになったよ」

私「どれどれ?」

長男「(右手の指を折って数える。親指が最下位ビット)これが1でしょ。 これが2 (10)。それから…

311
4100
5101
6110
7111
81000
91001
101010
111011
121100
131101
141110
151111

…っと」

私「うんうん、そうだね」

長男「へへ」

私「じゃあ、クイズね。いま1から15まで数えたよねえ」

長男「そうだね」

私「親指を折ったときの数、ってどんな数?」

長男「え? ええと…1でしょ。3 (11)でしょ。それから…5 (101), 7 (111), 9 (1001), …わかった。奇数だ」

私「大正解です。それでは、親指を折らないときの数は?」

長男「偶数だよ」

私「その通り。0のときはどうかな?」

長男「指折っていない。あれれ?0は偶数でも奇数でもないんじゃないの?」

私「いや、0は偶数だよ」

長男「そうかなあ…どうして?」

私「偶数ってどんな数?」

長男「2で割り切れる数が偶数でしょ?」

私「そうだね。2で割ったときにあまりがゼロになる数、といってもいい」

長男「うーん、そうだね。あまりがゼロって不思議な感じがするけれど、そうだね」

私「じゃあ0を2で割ったらどうなる?」

長男「あれ?0で割っちゃいけないんでしょ?」

私「ちがうちがう。0で割るんじゃなくて、0を2で割るんだよ」

長男「あ、そうか。0を2で割ったら、ゼロ…?」

私「そう。0を2で割ったら、0あまり0だ。だから0は偶数」

* * *

私「じゃあねえ、親指と人差し指の両方を折らなかったときの数はどんな数?」

長男「偶数!」

私「うん。確かに偶数だ。でも偶数全部じゃない」

長男「ええと、0でしょ、4 (100)でしょ、6…は違う。8 (1000)はそうだ。…わかった。4の倍数だ」

私「その通り。4の倍数。22の倍数といってもいい」

長男「どういうこと?」

私「もう少し先まで行けばわかる。親指と人差し指と中指の全部を折らないときの数はどんな数?」

長男「わかってきたぞ…。8の倍数だ!」

私「えらいえらい。その通り。これは23の倍数だ」

長男「うーん…。どういうことかなあ…」

私「10進数で考えてみよう。一番下の位が0になるのはどんな数?」

長男「10の倍数だね。10, 20, 30, 40, ...」

私「じゃあ最後が00になる数は?」

長男「100の倍数だ。100, 200, 300, ...」

私「そうだね。100の倍数、という代わりに102の倍数と考えてみよう」

長男「000で終わる数は、1000の倍数だ」

私「その通り。今度は103の倍数だ」

長男「わかったような、わからないような」

私「ここまでで材料はそろったんだよ。いいかい…」

2進数で、一番下の位が0になる(0で終わる)のは 2の倍数。

10進数で、一番下の位が0になる(0で終わる)のは10の倍数。

長男「そうだったね」

2進数で、00で終わるのは 4の倍数 ―― 22の倍数。

10進数で、00で終わるのは100の倍数 ―― 102の倍数。

長男「ふんふん」

2進数で、000で終わるのは 8の倍数 ―― 23の倍数。

10進数で、000で終わるのは1000の倍数 ―― 103の倍数。

長男「あっ、わかってきた。最後のゼロの数なんだ」

私「その通り。一般的に書いてみよう」

2進数で、N個の0で終わるのは 2Nの倍数。

10進数で、N個の0で終わるのは10Nの倍数。

長男「エヌってよくわからないけど、0が続いて終わるよねえ、 そのゼロの数の分だけ、2や10をかければいいんだね」

私「そうだよ。その通り。その『ゼロの数の分だけ』というのをはっきり短く言うために エヌっていう文字を使っているんだ」

(2003年5月14日の日記から)

豊かな人生のための四つの法則