ねえ、お父さんの子供のときの話をして

結城浩

2001年12月3日

7歳の長男が、眠るときに、 「ねえ、お父さんの子供のときの話をして」と言う。

お父さんが小学生のとき、夕方になると、学校のグラウンドで、 「もうおうちに帰りなさい」という音楽が流れる。 そうしたら、おうちに帰る。 帰る途中、夕焼けが見える。カラスもおうちに帰る。

家に帰ると手を洗って、うがいして、晩御飯になる。 晩御飯が終わると、畳の上にごろんと寝転ぶ。そうすると、 そこには昨日読みかけた本が置いてあるから、 続きを読む。お父さんもごろんと寝転んでいる。

長男「それは、○○じいちゃん、っていうことだね」

そう。 お父さんのお父さんは、寝転びながらいろんな話をしてくれる。 話をしながら、小さな紙に説明図を描くこともある。 どうして電気は流れるのか。電話で音が伝わるのはどうしてか。 星のこと、月のこと。混ぜ合わせるとドカンと音がする薬のこと。 お姉ちゃんもそこにいる。 そんな話をしていると、お母さんはリンゴをむいてくれる。 おばあちゃんは入れ歯を外したりする。

長男「ぎゃはは」

7時のニュースが終わるころに、家族のみんなはそれぞれの部屋に行く。 お父さんは書斎に行ってアマチュア無線をする。お母さんは食器を洗って ぱたぱた片付けものをする。おばあちゃんは寝床にいって、大音量で テレビの捕物帳を見る。お姉ちゃんは二階の部屋で勉強。 そして私は、自分の部屋で本を読む。

九時になると、ニュースセンター九時を見ながら、 また食卓でお茶の時間。それからお風呂。 そして眠る。

――お父さんが子供の頃は、そんな毎日をおくっていたよ。 同じようでいて、少しずつ違う。違うようでいて、何だか同じ。 そんな毎日。

長男はもう眠っていた。