こんな本を書きたい

結城浩

2000年12月21日

『Perlで作るCGI入門』基礎編はもう12刷になりました。 また、『Java言語プログラミングレッスン』上下巻とも早くも6刷。 ご購入してくださるみなさん、 応援&お祈りくださっているみなさんに心から感謝します。 また恵みと哀れみを施してくださる神さまに感謝します。

プログラミング言語の書籍を書くのはとても楽しい。 執筆でも、校正でも、(つらいときだってあるが)基本的にはとても楽しい (というのは、 結城の日記をご愛読くださっているみなさんは耳にタコができるくらい聞かせられていますよね)。 その上に、きちんと本が継続的に売れているというのは、望外の(?)喜びである。 結城はベストセラーの本を書くよりも、ロングセラーの本を書きたいといつも思っている。 ばっとたくさん売れなくてもいいから(売れてもいいけれど)、 末永くずっと売れつづけていくような本になるといいなあ、と考えている。 100m走よりもマラソンがいいなあ、と思うのだ。

それから、いつも「いい本」を書きたいと思っている。 ある分野について世界で(あるいは日本で)一番最初に出す本、 というのではなくてもいい。 もうすでにその分野でたくさん本が出ていてもいい。 その代わり、読者が結城の本を手にとって読んだときに、 何かしら「なるほど」と得るところがあるような本を書きたいと願っている。 「いままでこの分野は敬遠してたけれど、 結城さんの本を読んで○○がわかるようになりました」 と読者に感じていただけるような本にしたい、と願っている。

また、独学でチャレンジしている人を応援するような本を書きたいとも思っている。 もともとコンピュータやプログラミングの分野というのは、 かなり独学がしやすい分野だと思う。 自分の作ったプログラムが動く・動かないということで、 自分の誤りを見つけ出す(正せるかどうかはさておき)ことができるからだ。 とはいえ、独学はつらいものである。 ほんのちょっとしたことで、プログラムが動かず、とほうにくれてしまうこともある。 そういう人にエールを送り、励まし、役に立つような本でありたい、と願っている。 だから、結城は入門書を書きたがるのかもしれない。

もう1点。結城はできるだけ「易しい本」を書きたいと思っている。 世の中のコンピュータ関係の本の多くは必要以上に難しく書いているように感じるからだ。 確かに本質的に難しいことはたくさんある。 けれども、問題をよけいに難しくしている本がたくさんあふれている。 少なくとも私はそのように感じている。 どうして難しい本(難しく書いている本)が多いのだろう。 理由はいくつかあると思う。 1つは急いで書いているから、じっくりと表現や例題を練っていないこと。 易しく書くにはとっても時間がかかるのだ。 もう1つは(想像だけれど)著者が理解していないことを書いていること。 『知の欺瞞』じゃないけれど、自分が理解していないことを明快に解説することはできないのだ。 それから(これも想像だけれど)難しい表現を使ったり、 知識を山ほど詰め込んだ文章の方が「偉そうに見える」と著者が考えがちだからではないか。 シンプルに「AはBです」と書くところを「AはBの場合もあるし、Cの場合もあるし、DやEの場合もあるが、 実際にはFとなることが一番多い」と書いてしまうのだ。

ずいぶん偉そうに書いているけれど、 以上のようなことは、自分自身が心がけたいと願っていることでもある。 また、 自分が資料として読む本に対しても「もっとわかりやすく書いてくれないかなあ」と 感じていることでもある。