宝くじについて、長男と話す

結城浩

長男と電車に乗っている。

長男「何か問題だして!」

私「そうだね。じゃあ、あそこに宝くじの広告が出ているでしょう。」

長男「あの100万円×144本っていうの?」

私「そう、それ。144を素因数分解できる?」

長男「できるよ。144は12の2乗だよね。」

私「(びっくりして)よく知っているね、そうだよ。」

長男「ってことは。2×2×2×2×3×3だ。」

私「はい、正解です。2の何乗っていう表現を使うとどうなる?」

長男「2の4乗かける3の2乗。」

私「その通り。よくできました。ところで、あの宝くじ、一本200円って下のほうに書いてあるよねえ。」

長男「うん。書いてある。」

私「ではここで問題です。あの宝くじは、何本に一本くらい当たると思う?」

長男「え? 100本に一本とか?」

私「さあ、どうだろう。」

長男「200本に一本くらい?」

私「じゃあ、ちょっと考えてみよう。宝くじを運営しているところって、どうやってもうけているんだろう。」

長男「それは…宝くじを買った人のお金で、かな。」

私「おそらくね。あそこにある100万円×144本というのはどういう意味?」

長男「当たりが100万円だってことでしょ?」

私「そうだね。じゃあその「当たり」は何本あるかな。」

長男「144本。」

私「当たりがでたら、その人に100万円払うわけだ。ということは100万円×144本で賞金は全部でいくら?」

長男「100かける144…。」

私「単位は?」

長男「本、だね。」

私「本?」

長男「あ、違う、円だ。…違う、万円だ。」

私「そうなるね。(100×144)万円っていくらだろう。」

長男「ええと、せんよんひゃくよんじゅう…じゃない。一億四千四百万円。ひゃー。すごいね。」

私「そう。宝くじを運営しているところは、それだけのお金を払わなくちゃいけない。では、いまもうけをゼロにして、一億四千四百万円を稼ぐためには、一本200円の宝くじを何本売らなくちゃいけないだろうか?」

長男「200で…ええと、200で割るの?」

私「そうだね。200で割ると72万。少なくとも72万本売らないと、それだけの賞金は準備できないことになる。」

長男「ななじゅうにまんぼん!? そんなに売らなきゃいけないの?」

私「正確には72万本のうち、あたりは144本だ。ということは、5000本に一本。」

長男「100本に一本じゃないんだ…。あ、でも、これはもうけがゼロのときだよね。」

私「その通り。宝くじを売るためのあの広告のお金も、宝くじそのものを印刷して作るお金も、宝くじを売っている会社で働いている人のお給料の分もまだ考えていない。」

長男「うーん。ということはもっと少なくなるんだよね。それに、あの下のほうには100万円以外の賞金もあるよ。」

私「そう。どんどん当たる割合は減っていく。何となく、100本に一本とか1000本に一本とか理由もなく考えちゃうんだけれど、実際にどれだけの割合であたるのかを正確に見積もるのは難しい。」

長男「うーん。」

※念のため書いておきますが、サマージャンボ宝くじなどの場合、 発売本数は公開されています ので、当たる確率および期待値は正確に計算できます。

(2004年6月15日の日記から)

豊かな人生のための四つの法則