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本を書いている。
すべての章の構成を再度見直している。 読み返しながら、全体を通じて流れる「物語」を見つけようとしている。 …というのは気取って書いているわけではなく、真剣な話だ。 私が書こうとしている題材はすでにたくさんの人によって、 より広く、より深く書かれているものだ。 だから、私はこの題材の中に流れている「物語」を私なりに発見しなければならない。 発見、といってもそれは本当の意味では発見ではない。 専門家なら当然と考えていることだろうから。 専門家ならもう血肉のようになっていて、自然にその前提となっている考え方、 でも専門家以外にはあまり知られていない何か。 それが「物語」だ。魔法の呪文と呼ぶこともできるかな。 本を書くときには、毎回、新しく「魔法の呪文」を見つけなければならない。
…そのような「魔法の呪文」を発見しなければならない。 そして「物語」は魔法の呪文にしたがって流れていく。 魔法の呪文は短い。物語は長い。 魔法の呪文は唱えればよい。 物語は語らなければならない。
たかが技術書の執筆で、何でこんなに一人で盛り上がっちゃうかというと、 とても面白く、同時にとても難しい仕事だからだ。 確かに、数学者や科学者のように真に新しい何かを発見しているわけではない。 私の書くような本は特にそうだ。 でも。でも。 私の本を通して、 いままで目の前にあったけれど気づかなかった何かを発見する 読者がいる。そのことを大切にしたい。 いつも使っている道具、いつも使っている技術であっても、 それを当たり前のものとするのではなく、読者に何かしら新しい視点を提供する ――そんな本を書きたい、といつも願っている。
読者の「なるほど」は著者の喜びである。
―― やれやれ、肩に力が入っているなあ…(^_^;
(2002年11月19日の日記から)