子育て

結城浩

2001年7月2日

7月は結城の誕生月。 38年前、私を産んでくれたお母さんに感謝します。

息子二人をお風呂に入れて、 本を読んで寝かしつけるのが私の仕事になっている。 最近の次男のお気に入りは『しろくまちゃんのほっとけーき』(わかやまけん)である。 もうすぐ2歳の次男は内容をほとんど暗記していて、私が「しろくまちゃんの…」と読むと、 次男が「ほとけーき!(ホットケーキ)」と叫ぶ。 私が「たまご…ぽとん」と読むと、 次男が「あ、わりちゃた!(割れちゃった)」と叫ぶ。 特にお気に入りなのが冷蔵庫である。 冷蔵庫が登場するページを開くと「れぞこ、どこ?」と必ず言う。 ストーリーは次のページに進んでも、くりかえし「れぞこ、どこ?れぞこ、どこ?」とせわしない。 その話をすると、家内は「だって、冷蔵庫はあの子にとっては魔法の箱。 ジュースも、アイスも、大好きなものはあの中から出てくるんですもの」とにっこりする。 なるほど、なるほど。

もうすぐ7歳の長男は、眠るときに自分でポケモンずかんを読んだり、 ナルニアを読んだり、プーさんを読んだり。 ときおり「ねえ、おとうさん。『銀のいす』読んで」などと言ってくる。 全部読むわけにはいかないから、一章だけ読むと、 いつのまにか長男は眠り込んでいる。 最近はあまり「うさぎのまど」や「めーめーさん」をお話しすることはない。 次男がもう少し大きくなったらまたその機会もあるだろうか。

夜中、暑くて寝苦しいとき、次男が急に泣き出したりする。 そんなときは「だいじょうぶ、だいじょうぶ、おとうしゃんはここにいるよ」 と言いながら次男の背中を手でさする。 そうすると、すうっと泣き止んですやすや寝入る。

次男はまるで台風のように家の中をちらかしまくる。 新しいものを見つけ出すのがとても上手で、 本棚に新しく並んだ『Java言語で学ぶデザインパターン入門』をさっと引き出そうとする。 まったく油断がならないが、 カタコトでいろんなことを話そうとするのはとてもかわいい。 「ちんかんちぇん(新幹線)、ビューンってー」とか、 「(コップのジュースをこぼして)ボトボトってー」という。 ○○ってー、という表現がかわいい。

食事の時にはテーブルを囲んだ4人が丸く手をつないでお祈りをする。 「天のお父さま、この食事を感謝していただきます。アーメン」 その後、次男は右手を高く上げて「エイオー!」と叫ぶ習慣になっている。謎だ。

長男は小学校に楽しく通っている。 でも、登校直前はばたばた大騒ぎになる。 時間割がそろっていないーの、 プリントを出していなかったーの、 今週は給食当番だったーの。 登校直前にそんなことを言われても困るんだけどな、 という出来事が必ず起こる。 やれやれ、と脱力する幸福。

私はお風呂と寝かしつけだけだから楽なものだが、 家内は一日中子どもとべったりだから大変だ。 いつも、どこか目の端、意識の端で子どもを見ているから、 なかなか気が抜けない。 子どもが勝手に遊んでいるときでも、 親は危険はないかと常に意識している。 子どもはそんな親の意識は知らない。 「親の心、子知らず」とはよく言ったものだと思う。 でも、自分だって子どものときはそうだったのだな。 まあ「順番」ってことだ。

38年前、親が私を見守ってくれていたように。