「レクチャ」をはじめる

結城浩

2002年7月25日

日記の読者のみなさま。いつも結城の活動を応援くださり、ありがとうございます。

新しい企画「レクチャ」をはじめようと思います。 「レクチャ」は、結城がいろいろ学んだこと、 思いついたことを、メールマガジン風に参加者にお送りする企画です。

まず第一弾として、 Microsoftの.NET Frameworkで注目されているC#言語のレクチャを運営開始します。 以下のページの注意をよく読んで、ぜひご参加ください。

今日の午後、上記のようにアナウンスしたところ、 さっそく何人かの方が参加してくださいました。 いつもながらのすばやい反応、ありがとうございます。 夜半にはとりあえず20人を越したので、何だかちょっと、一安心。 応援メールもたくさんたくさんいただいております。 感謝ですう♪ さて、どうなりますやら。

忘れないうちに、 「レクチャ」をはじめるにあたって考えたことを書いておこう。

最初に思いついたきっかけは忘れたけれど、 何となく「誰かに見られている状態で勉強したいな」というのが最初かな。

コンピュータ関連、プログラミング関連の分野というのは日々勉強ですよね(どの分野でもアクティブな分野ならそうかもしれませんが)。 で、勉強しているときにはいろんなことを考えるわけです。 小さなプログラムをいくつも書いたり、この概念はこういう意義を持つのかなと想像したり。 そういう細切れの情報はまあ、自分の血肉になっていくわけですけれど、 自分の中に閉じ込めてしまうのは何だかつまらないなあ、と思ったのです。 思考のフラグメント(断片)を、フラグメントなりにそろえておきたい、と、そう思った。

もちろん日記の中でそういう技術的な話を続けてもいいのですけれど、 まとまりがなくなるし。

本を執筆することがはっきりして、自分の気持ちも整っている状態なら、 レビューア募集をかけて、いつものようにレビューの形にしてもいいけれど、 まだそこまではいっていない。 それにレビューアへの送付は一章単位だから、けっこう「重い」。 もっと軽く、思いついたときにサクっと送れるような自分用のメディアを作っておきたい、 と思ったのです。

「それ」は、メールマガジンよりも軽い。レビューよりも軽い。 メーリングリストのようにコミュニティになるわけではない。 レビューのように一対一に近い。 願わくは参加者から何らかのフィードバックがほしいけれど、 それはmustではない。

うん、ちょうど、閑散とした大学の講義みたいな感じ (いっていることが矛盾しているけれど気にしないでください。メモですから)。 先生がのそのそやってきて、誰に聞かせるわけでもなくぼそぼそっと話をして、板書をする。 出席をとるわけではないから生徒はいたりいなかったり、 たまに興に乗った生徒が「先生、それ間違ってます」と指摘する。 なるほど。それで「レクチャ」と名前をつけたんだな。 「一対一に近い」や「フラグメント」というのと矛盾しているけれど、まあいいや。

ともかく。

どっちかというと「レクチャ」は自分向けに書いている。 けれど、自然と読者(参加者)は意識するし、 文章にまとめることによって、 自分の知識の整理になる。 頭の中で「ふんふん」と納得するのと、自分の手を動かして文章の形にするのでは、 理解度が天地ほども違うものだから。

ついでに、この企画を考えているときの私の心に浮かんだ意見をメモしておこう。

間違ったことを書いて、恥をかいたり評判を落としたりしたら困るんじゃない? →いや、そうは思わない。 もちろん間違ったことを書かないように勉強するわけだけれど、 自分の中で間違いを長く持ちつづけるよりは、ひとときは恥をかいても、 正しい指摘を受けたほうが長期的にはよい、と思う。

本の題材となるような話題を公開してしまって、まるごと盗まれたら困るんじゃない? →そういう考えを持つ人もいるかもしれないけれど、 そういう人はどうやっても盗むだろう。 それに、そういう態度で進めた仕事は長続きしないものだ。 また、公開されているものはかえって盗みにくいものだ。 なぜなら、他の人に「これって結城さんの○○じゃないの」と分かってしまうから。 だから、盗まれるかどうかを心配するよりも、自分の勉強を充実させることの方に神経を使うのがよい。 もちろん、悪意なく「公開しているのだから自由に使ってもいいのだ」と勘違いする人を防ぐために、 きちんと「これは結城の著作物です」ということを明記しておくことは忘れないように。

レクチャを公開しても、何の収入にもならないなんて、無駄じゃないの? →まったくそうは思わない。 この「レクチャ」がどう進むかはわからないけれど、 自分の学習のモティベーションを高めることができ、 またこういう話題に関心のある人とのチャネルができる、 というのは、金銭に換えがたいメリットがあるのだ。 いわば、無料で自己啓発教室に通い(いや、自分で運営して)、 無料でたくさんのアドバイザーからアドバイスを受けるようなものだ。

アナウンスしても、誰も集まらなかったらどうするの? →きっと、大丈夫だ(でも10人越すまではドキドキだった)。 だって、以前レビューアをやってくださった方の多くが「またやりたい」と言っていたから、 こういう「無料で、メールベースで、新しい情報のやりとりができる」というスタイルは それなりに受け入れられると思う。

日記でやればいいんじゃないの? →そうかもしれない。 でも、メールベースのほうが、 (いちいちWebに見にこなくていいので)参加者が楽。

他の分野に興味が移ったらどうするの? →そのときまた考えればいい。 こういう企画は、サクっと立ち上げ、サクっと終わらせることができるのが特徴だ。 あまり先まで考えすぎず、まずは、自分の思った通りの方向で進めてみよう。 これまでもそうやってきたし。

新しい企画をどんどん始めるのはいいけれど、「文章教室」はどうなっているの? →一時停止中。でも、またそのうちノッてくるときもあるだろう。 そのときに続ければいいじゃないか。

メールマガジンならFreeMLより「まぐまぐ」のほうがいいんじゃないの? →FreeMLでもメールマガジン形式(管理者のみが投稿できる)は可能。 それに「まぐまぐ」よりも「参加者が誰か」の把握が楽。 悪意があるユーザが(万一)存在したときに防ぐことも可能(FreeMLにはブラックリスト機能がある)。 「まぐまぐ」では「参加に承認が必要」という設定が不可能。 「まぐまぐ」では「非公開のメールマガジン」の作成が不可能。 「まぐまぐ」では「メールからの投稿」が不可能。 以上の理由で、自由度の高いFreeMLを利用することにした。

C#言語以外の「レクチャ」は? →「レクチャC#」が軌道に乗ったら(あるいはマンネリ化したら)、 別のレクチャを始めるのもいいかも。まあ、それはまたそのうち。

いずれにしても、新しい企画って何だか楽しいなあ。 応援メール、ご意見メールもほんとにたくさんいただいてます。 とてもうれしいです。感謝します♪