寝床で長男と話す

結城浩

2002年6月23日

長男「ねえ、おとうさん、小さいときの話をして」

私「子供の頃、図書室で本を読むのが好きだったよ。理科の本とか、数学の本とか。ムーミンの本も好きだった」

長男「ムーミンって、あのムーミン?」

私「そう。トーベヤンソンのムーミン」

長男「ムーミンって、ムーミンパパとか出てくる、あのムーミン?」

私「そう。そのムーミン。それからコンピュータの本も好きだった」

長男「コンピュータって、理科なの?」

私「うーん、そうだね。理科と数学の間くらいかな」

長男「でも、国語みたいなところもあるよ」

私「あなたは素晴らしいことを言うねえ。どうしてそう思ったの?」

長男「だって、文字を入れたりするじゃない」

私「そうだねえ。それから、お父さんは2進数の本を読むのも好きだった」

長男「『にしんすう』って、数字の『2』と『すすむ』と『かず』って書くの?」

私「そうだよ。2になると位上がりするからだね」

長男「ねえお父さん、ふとんかけて。じゃあねえ、2進数で引き算するときって、2をおろしてきたりするの?」

私「そのとおり。上の位から2を借りてきたりするねえ。2進数だと、1, 2, 4, 8, 16…の位になるね。ふとんはここだよ」

長男「え、そうなの? 1, 2, 20, 200, 2000…じゃないの?」

私「違うよ。それは10進数に毒されている。2進数では、だんだん二倍になっていくんだ。私たちの10進数だと0から9までの数を扱う必要があるけれど、2進数だと、0と1さえ扱えればいい。コンピュータは簡単なことを繰り返すのが得意なんだ」

長男「あのね、お父さん。ネットでページを開くでしょ。そうすると1回「もどる」のボタンを押すと、前より早いんだ」

私「よく気がついたねえ。あなたが発見したの?」

長男「そうだよ」

私「それはすごい。1回訪れたページはメモリ上に持っているんだね。だから早い。実際「もどる」で見るときはネットからページを持ってこなかったりするよ」

長男「うん、知ってる。だからねえ、ゲームのページとか、二つ開いておくの。そうするとネットが切れたときでも、もう片方でできるから」

私「なるほど。それはあなたが考えたの?」

長男「そうだよ」

私「あなたは賢いねえ。お父さんは、あなたのことが大好きだよ。あ、半そでじゃないか。今日は寒いから長そでにしよう。いま持ってくるよ」

長男「うん」